広島大学教育学部第二類技術・情報系コース
 
 

金属加工担当 :鈴木 裕之

 

技術・情報系コースで金属加工を担当する鈴木です。 本コースで開講する金属加工に関する授業内容について紹介します。 

金属活用概論 1年生後期
金属活用教材演習I 2年生前期
基礎製図 2年生前期
金属活用教材演習II 3年生前期
金属機械加工概論 3年生後期

 

金属活用概論

 金属・セラミックス・有機材料の三大分類から始め,代表的な金属材料として鋼と炭素の合金を中心に,各種金属材料の特性とその評価法について学びます。さらに,溶融加工と塑性加工の基礎についても学びます。本授業を学ぶことで,世の中ある様々な金属製品に使われている材料の種類やその特徴について理解することが出来るようになります。また,それぞれの金属製品が,どのような加工法によって作られているかも分かるようになります。

 

金属活用教材演習I

金属加工の基礎として,除去加工(ヤスリ掛け,のこ切断),塑性加工(板金加工,冷間鍛造)を中心に,実際の製品を加工しながら学んでいきます。実習を通して,センタポンチ,ちりとり,ドライバーなどを製作しますが,いずれも実用可能な性能を持った製品です。本実習を学ぶことで,基礎的な金属製品であれば自由に加工することが出来るようになります。

               
 

基礎製図

金属製品に関わらず,さまざまな製品を企画し設計する基礎段階で必要な製図法について実習します。製図のポイントは,三次元の製品形状をいかに二次元の紙面上に表現するかです。投影図や三面図の描き方を学び,さらにJISに準拠した製図通則を踏まえながら寸法線の記入方法や,はめ合い公差,ねじや歯車といった機械要素の製図法を学びます。本字実習を学ぶことで,簡単な製品の構想し,それを実際に形作っていく基礎能力を育むことが出来ます。

 

金属教材活用演習II

本授業では,自ら企画・設計した製品の加工に挑戦します。テーマとして「てんびんの作成」を掲げています。一人一人が異なった製品企画を考えて,異なった設計仕様・構造を図面としてしあげて,さらに製品として加工組み立てを行います。製品の出来具合は,最後にどれだけ正確に重さが測れたかで確認することが出来ます。上手く作ると市販製品にも負けない高精度のオリジナルてんびんが生み出されます。本授業を通して,自由な発想で企画・設計した製品を作り上げる能力を育てることが出来ます。

               
 

 

金属機械加工概論

この授業では,金属を切る・けずる加工法(除去加工法)の基礎的な理論を学びます。さらに,「旋盤」や「フライス盤」といった本格的な工作機械を使って,実際の機械加工について実習します。これらは,実際の機械製造業と同水準の加工技術となります。本授業を通して,中学校の技術科で必要な加工レベルを超えて,工業高校機械科における教育が遂行できる力を育みます。

 

「教員からのメッセージ」

金属加工は,もしかしたら,いわゆる3K(きつい,きたない,危険)的な作業の典型例のように感じている人がいるかもしれません。でも,そんなことはありませんよ。今日の日本の金属加工業は5S(整理,整頓,清潔,清掃,しつけ)の優等生でもあります。安全に,端正な加工によって精密に機械を作り上げていく・・・,その不断の努力が日本の製造業を支えさらには技術立国としての日本の繁栄を静かに,しかし,しっかりと底支えしているのです。本コースで行っている手加工中心の金属加工でも,一つ一つの部品を丹念に仕上げていくことで,ミクロンからナノオーダーの精度を持った精密な製品を作り上げることが出来ます。緻密に作り上げられた金属製品には,特有の,何物にも替えがたい魅力があります。 頭の中に思い描いた様々な製品を,自分の知恵と工夫で自由に作り出せるようになったらと想像してみてください。それは素敵なことだと感じませんか?

 

 

ちなみに,世界最大の精密測定装置メーカーも,ここ広島大学の近くにあることをご存知ですか? また,世界最先端の半導体製造会社も広島大学のお隣にありますよ。それを言い出すと,広島大学のメインシャンパスがある東広島市内だけでも,世界最大の精米機メーカー,世界中のロケットなどで使われている各種センサー,世界唯一のロータリーエンジンのキーパーツの加工会社,フィルム印刷の世界的大手企業などなど・・・,まだまだいくらでも「隠された巨人たち」を見つけ出すことが出来ます。 中学校や工業高校の技術科の授業を通して,幅広で奥も深い金属加工のエッセンスを知り,それを次世代を担う子供たちに伝えていく伝道師を生み出していくのが,我々技術・情報系コースのミッションの一つです。是非,金属加工の扉を叩いてみてください。 授業を通して、ものづくりや技術科・工業科のすばらしさやおもしろさ、社会の中で果たす役割などを教育の場で正しく伝えることのできるような人材の育成を目指しています。ものづくりでは予想できなかった困難に直面したり、ときには失敗することもあります。そのような問題に対して、最適な解決策を導き出すことができるようになって欲しいと思います。